産業の近代化のあけぼの
波乱万丈の渋沢伝の後半部分がこの本で、井上馨と一緒に大蔵省から下野して実業界に身を投じ、日本資本主義産業社会の黎明期に、国立銀行をはじめ多くの商工業の創立と育成に身を捧げた渋沢の後半生が描かれている。国際人となった渋沢の、険悪化する日米関係の修復の為に奔走する晩年の姿が、サブテーマとして異彩を放っている。 パリ万博で、西欧の強大な文明社会に威圧された渋沢は、対峙する為には、産業を興して国富を増強する殖産興業による国力の増強以外にないと感じる。軍人と銀行家が対等に渡り合う姿を見て痛く感激し、士農工商身分制度で、商人を最下等に置き商を蔑む日本の風潮を憂い、実業に身を投じて日本再生を期す決心をする。 何の経験も無い新規事業の創始には、唯一点「西洋人に出来て日本人に出来ない筈が無い、欧米で大発展している事業が日本に根付かない筈が無いと言う勇猛心と、失敗すれば腹を切る。」と言う信念あるのみ。全く皆無の基礎造りからの欧米流新規事業の実業界への導入は、正に、失敗の連続で、艱難辛苦を舐め尽して日本の近代商工業を育成を図って来た。 明治維新も戦後復興も、先行する欧米にキャッチアップする事によって経済成長を成して来た日本が、やっと頂点に立ちながら先行出来なくて、10年以上の不況を託っている。先の見えない先行者が居なくなった、そして、グローバル化した国際経済社会を如何に行きぬくべきか、渋沢栄一ならどう考えるであろうか。渋沢の生涯を描くことによって、読者に津本陽が語りかけている、そんな気がした。
ぜひ読んでください
買ってから3日で読みきりました。(上)をまだ読んでいない方でも十分楽しめる内容です。
NHK出版
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